日下古文書研究会の『くさか史風』

地域に残された古文書を読むのが、ちょっとしたブームになっている。くずし字ブームと相俟って、公民館などで退職後の人生のテーマとして古文書読解に取り組む人が少なくないという。

そうした中でも、日下古文書研究会は、素晴らしい成果を挙げている団体であると思う。その仕事は多くの書籍として発表されていて、現在河内の漢詩を読んでいる私にとっても必読の文献になっている。興味をお持ちの方はぜひサイトをご覧頂きたい。

日下古文書研究会

コロナ禍で公民館なども利用しにくくなり、サークル活動などが停滞しているところも多いが、変わりなく会報『くさか史風』を恵贈いただいた。インターネットを利用して活動を続けているという。

 

その最新号である第8号は新調された太鼓台のカラー写真の表紙。楽しみにしていた生駒山人の連載がなくなったのは残念だが、盛りだくさんの内容である。

天野忠幸「戦国時代の深野池・新開池でのおもてなし」は、かつての深野池・新開池では屋形船を浮かべ、料理専用の船が新鮮な料理を振る舞う接待が行われていたことを本願寺証如や宣教師の例を挙げて紹介している。

大和川付け替えや新田開発によって水利は現在とかなり異なっていること、現在のイメージで捉えてはいけないことを実感させられるが、佐々木拓哉「『深野新田周辺川堤絵図』について」はその水利の変化が人々にどのような影響を与えたかを教えてくれる。

浜田昭子「『日下村森家日記』にみる江戸時代の暮らし 額田村馬方馬荷奪い取り事件」「村方文書に見る近世の村社会の人間模様」は江戸時代の人々の生の暮らしが窺える。また、「天誅組騒動―十津川郷今西村文書『大和義挙の事跡』より―」は河内の人たちも天誅組に関わったことを述べており、当地の人々が国学を学んだことと考え合わせて興味深い。

西村元一「多田の開帳」は森長右衛門の記録から、多田院(現在の川西市多田神社)の開帳を見に行く小旅行を紹介している。

 

コロナ禍の中でも会報をたゆまず刊行されて第8号、『くさか史風』は早や10号の王手がかかっている。