自分で詠んでみることで漢詩を学ぶ

昨年度まで、ちょっと変わった漢文の授業を担当していました。実際に学生さんに漢詩を作ってもらうことで、漢詩に関わる内容を学んでもらうという授業です。

年度ごとにアレンジしていますが、だいたい以下のように進めていました。ほとんどの回で、以下の内容に加えて有名な漢詩の鑑賞をしています。

 

  1. 七言絶句のお軸を読んで、漢詩についてざっくりとした話をする。特に、2・2・3で切れていることに気付いてもらう。意外と気付いていないので。
  2. 平仄について学ぶ。漢和辞典に平仄のマークがあったことに気付いてもらう。自分の名前や好きなアイドルなどの平仄を調べてみて、平仄が同じ人同士、異なる人同士のペアを作って遊ぶ。
  3. 対句について学ぶ。を紹介する。自分の部屋に飾るという設定のを作ってもらう。
  4. 用意された韻で、カード(後述)を用いて絶句の転句を作ってもらう。
  5. について学ぶ。柏梁体で遊ぶ。
  6. 既に作ってある転句に繋がるように残りの3句のうち、作れるだけ作ってもらう。←これはあとで推敲します。
  7. 詩語集を紹介する。昔の日本人が漢詩を作っていたことなど文学史的なことを説明し、主として江戸時代の日本人の有名な作品を紹介する。
  8. 「送別」「秋」「新年」などのテーマごとに有名な作品を鑑賞する。例えば「黄鶴楼送孟浩然之江陵」を鑑賞すると「〔地名〕送〔人名〕之〔地名〕」に自由に地名や人名を入れて題を作るなど、創作的な作業をして構造を確認するようにする。また、毎回平仄を示し、も韻目表で確認し、7で作った句を推敲する、または一から作り直す。
  9. 色紙に自作の漢詩を書く。

平仄を学ぶために、平声の詩語はピンク、仄声の詩語はブルーのカードに書いたものを用意しました。これを机に並べると、パズルのように句を作ることができます。

水道の広告マグネットを利用して、平仄の白丸黒丸のマグネットを作りました。黒板で平仄の説明をするとき便利です。

 

期末には自作の七言絶句(五言絶句より七言絶句の方が初心者には作りやすいようです)に書き下し文と注釈を添えたものをレポートとして提出してもらいました。自分で詠んでみることで漢詩について学ぶのが目的なので、文学作品としての出来の良さは考慮せず、漢詩のルールが守られているかをチェックしました(ほとんどの場合、結果的に良い作品は高得点になります)。この他、毎回の授業でのちょっとした作業や聯などの小さな提出物にも点数を付けました。

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初心者の入門書として太刀掛呂山『だれにでもできる漢詩の作り方』がありますが、Amazonではアホみたいに高いです。

国会図書館のデジタルコレクションに入っているので見ることができますし、古書店に在庫があればそちらのほうがずっと良心的な値段になると思いますので、手元におきたい方は日本の古本屋で探すのをお勧めします。

webcatplus.nii.ac.jp

東方書店には在庫がありそうです(5月16日現在)。こちらで扱っておられるのは古本ではなく新品です。

www.toho-shoten.co.jp

こんな本が出るんですね。